認識から行動へ。学生から社会人まで参加する学びの場。

市民のための環境公開講座2019

2019年度市民のための環境公開講座パート2終了しました。パート3の参加者募集中です。

PART2 豊かな生活と環境の共生

10 2 レポート

地球をケアする”コスメティックレボリューション” 企業によるプラスチックごみ削減の取り組み

窪田 とも子 氏

窪田 とも子 (株)ラッシュジャパン アースケア スーパーバイザー

「パッケージなんていらない」~使い捨てに依存するライフスタイルはもう終わりにしませんか?地球がプラスチックごみで埋めつくされれてしまう前に、私たちにできることは何でしょうか?もう時間がありません。小さなことでも今すぐできることから始めてみましょう。

講座概要

ラッシュは英国発の化粧品ブランドです。私たちは環境への配慮を常にビジネスの中心に置いて、様々なイノベ―ティブな商品を展開しています。本講義では、パッケージフリーの裸の商品である「ネイキッド商品」や「空容器回収」などのプラスチックごみ削減の話を中心に、ラッシュの環境に対する取り組みをご紹介します。


講座ダイジェスト

地球でビジネスをさせてもらっているので地球を守りたい

1994年、ラッシュはイギリスのドーセット州、プールという名の港町で、コスメティックブランドとして誕生しました。今では、世界48カ国に約930店舗を展開し、そのうちの84店舗がここ日本にあります。日本で販売されている商品は、輸入品ではなくラッシュジャパンが神奈川県愛川町に構えている工場で生産をしており、そこでは韓国をはじめとするアジア6カ国の輸出も行なっています。

私は、アースケアと呼ばれる環境問題の解決を率先して行う部署に所属していますが、ラッシュにおける環境への配慮は、部署に関わらず、常に私たちのビジネスの中心に置かれています。ラッシュは、あくまで地球でビジネスをさせてもらっている立場であり、地球の環境が破壊されてしまっては、ラッシュが目指しているハッピーでヘルシーな生活を実現することも出来ません。そのため、私たちは地球の環境を守ることもひとつのミッションだと捉えています。

ラッシュは、創立当初からフレッシュでオーガニックな野菜やフルーツを使い、ハンドメイドで100%ベジタリアンな商品を生産してきました。「動物を犠牲にしてまで綺麗になる必要はあるのか」「人が使う商品の安全性としては60-70%しか正確性がない」という観点から、化粧品における動物実験にも反対しています。今回は、そんなラッシュが掲げている信念のひとつ、「パッケージは可能な限り使用せず、使用する場合も最小限にとどめる」に基づいた、ラッシュにおけるプラスチックのごみの削減について、お話しをさせていただきます。

使い捨てによって生まれるプラスチックごみ

まず、プラスチックごみによる影響は、大きく堆積するごみによる海洋環境への影響、マイクロプラスチックによる生態系への影響、プラスチックの大量消費による地球温暖化への影響、の3つに分けられます。中でも、海に流失したプラスチックごみの総量は、2015年時点で約1億5000万トンで、それ以降も年間約800万トンのプラスチックが流出し続けていると考えられており、このペースでいくと2050年には流出したプラスチックごみの総量が、海にいる海洋生物を超える(重量ベース)ことが懸念されています。

また、プラスチックごみが海を移動する間に粉々に砕け、マイクロチップと呼ばれる5ミリ以下のプラスチックや、ナノプラスチックと呼ばれる10,000分の1ミリ以下のプラスチックとなったものが、海洋生物の体内に蓄積されることも問題となっています。これらは、人工芝や紙おむつのポリマー、印刷機のトナーなど、あらゆるものが発生源となっていて、下水処理では100%取り除くことが出来ません。最近、水道水や飲料水に含まれるマイクロプラスチックによる健康リスクは生じないと、WHO(世界健康機関)から発表があったものの、ナノプラスチックが細胞膜を通して生物組織へ与えるダメージについては、まだまだ検証が行われている段階です。

これらのプラスチックごみを削減する基本的な姿勢は、3Rです。①プラスチックの使用量を削減すること(リデュース)、②使い捨てのプラスチックを削減すること(リユース)、③使ったものはリサイクルすること(リサイクル)。さらにマインドとして、本当に必要なものかどうかを考えてから購入することや、使い捨てに依存しないライフスタイルの確立が求められます。2015年に世界から排出されたプラスチックの廃棄量は約3億トンで、そのうちの約1億4100万トンは、使い捨て中心の容器包装によるものと言われています。ちなみに、2018年に国際連合環境計画から発表された日本の使い捨てプラスチックの発生量は、一人あたり年間32キロで、これはアメリカに次ぐ世界2位の数字です。軽くて安い上に、加工も容易なプラスチックですが、私たちはその代償にごみの山を買っているとも言えるのではないでしょうか。

選べる機会を提供する責任

ラッシュでは、こうしたプラスチックごみの発生を削減するために、ラッシュの信念に基づいて、「パッケージは可能な限り使用せず、使用する場合も最小限にどとめる」ということを追及しています。その代表とも言えるのが、シャンプーバーなどのネイキッド商品です。ネイキッド商品とは、フィルムなどの包装をせず、裸の状態で販売している商品のことで、日本では2016年から展開し、今では質感や香りを楽しめるとの声を多くいただくようになりました。ネイキッド商品のアイテム数は全体の半数を越え、2018年からはリップスティックなどのカラーコスメのネイキッド化にも取り組んでいます。

また、ラッシュで使用している容器は100%再生プラスチックを使ったもので、化粧品には珍しいシンプルで無駄のないデザインが特徴です。ラッシュでは、これらの空容器を店舗で回収しており、一度使ったものをリサイクルし循環させることで、プラスチックごみの削減に繋げています。その他にも、デジタルパッケージという携帯をかざすことで商品の説明や成分を見られる仕組みや、Knot Wrap(ノットラップ)という日本の風呂敷から着想を得たラッピング資材の展開など、様々な角度から環境への取り組みを進めています。

私たちは、お客様が環境に配慮した商品が欲しいと感じた時、「選べる」という価値を提供する責任と、これからも向き合い続けていきます。そしてどんなに困難であってもラッシュはパッケージという側面から、化粧品業界の常識や境界線に挑む”コスメティックレボリューション”を続けていきます。

先月の9月20日に表参道で行われたグローバル気候マーチに参加をした際、日本の参加者が世界に比べてまだまだ少ないことを改めて痛感しました。地球がプラスチックごみで溢れる前に、使い捨てに依存したライフスタイルはもう終わりにしませんか。皆さんも、何かを禁止するのではなく、まず身近に出来ることから始めてみませんか。私たちは、ひとりひとりの行動が、プラスチックごみ問題を解決に向かわせる第一歩となり、それがまた大きな動きに繋がっていくことを信じています。未来のために動くのは今です。

構成・文:伊藤彩乃(株式会社Fukairi)/写真:廣瀬真也(spread)