市民のための環境公開講座2017

お知らせ9/12(火)開催 田原 象二氏の講演レポートを掲載しました。

PART2 未来世代へのメッセージ

レポート

9/12

スターバックスの倫理的なコーヒーの調達

田原 象二郎 氏

スターバックスのコーヒーは、生産地から店舗に届いてお客様の手に渡るまでに多くの人たちの手を経ています。その背景と仕組みを生産地での体験を交えながらお伝えします。ご参加いただけると、今までよりも一杯のコーヒーをよりおいしく感じていただけます。

一杯のコーヒーに溢れる情熱を注ぐ

田原 象二郎 スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 コーヒースペシャリスト

スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 コーヒースペシャリスト / マーケティング統括 商品本部 コーヒー部 コーヒーリーダーシップチーム マネジャー。2000年に入社。ストアマネージャーを経て、2006年からはコーヒースペシャリストとして活躍している。パートナー(従業員)のコーヒーに関する知識向上のための教育プログラムを開発し、パートナーからお客様へ分かりやすくコーヒーの魅力を紹介するしくみを考えて伝達している。また、コーヒーの生産地を実際に訪れた経験を活かして、同社の取り組みを社内外に伝えている。


講座ダイジェスト

コーヒーの倫理的調達99%を達成

まず、クイズを出題します。

『1本のコーヒーの木から1袋250g入りのコーヒー豆が何袋採れるでしょう』

・・・正解は「2袋」です。

では、もう一問。『コーヒーの木からおいしいコーヒーチェリーが収穫できるようになるには何年くらいかかるでしょう』

・・・正解は「3〜5年」です。

この2問の答えを知って、あなたはコーヒーについてどう感じるでしょうか。コーヒーとは、きちんと計画的に栽培をしていかないと経済的に成り立たない作物なのです。

現在、世界中で2,500万人がコーヒーで生計を立てています。私たちスターバックスは、「人々の心を豊かで活力のあるものにするために」というミッションを掲げ、その人たちの生活を私たちの活動でよりよいものにできるよう取り組んでいます。その一つとして、世界のコーヒー生産地に「ファーマーサポートセンター」を設け、おいしいコーヒーを持続可能に調達する仕組みを作りました。これは、現地の生産者と直に接してコーヒー豆の品質と収量の向上に取り組むなど技術支援を行うものです。しかもこのセンターは、コミュニティ全体のコーヒー生産者をサポートするもので、スターバックスが購買契約をした生産者だけを対象にしているわけではありません。

また、スターバックスは、高品質なコーヒー豆の生産を持続可能にするためのガイドライン「C.A.F.E.  (Coffee And Farmer Equity) プラクティス」を、国際環境NGOのコンサベーション・インターナショナルとの協力で2004年に導入しました。これは、「品質基準」や「経済的な透明性」を必須条件とし、加えて、労働者の人道面など「社会的責任」、そして「環境面でのリーダーシップ」を第三者機関が審査することで評価されるものです。スターバックスは、創業当時から生産者との信頼関係を築きながらコーヒーを購買してきましたが、こうしたオリジナルのガイドラインの策定や国際フェアトレード認証コーヒーの購買を通じて努力してきた結果、2015年にコーヒーの倫理的な調達、99%を達成しました。

おいしいコーヒーには、生産者の安定した暮らしが欠かせない

スターバックスはスマトラ島に病院を設立しました。一体なぜ私たちのような企業が、インドネシアに病院を作る必要があったのでしょうか。この地域は、体の具合が悪くなって病院に行こうと思っても、5km歩かないといけないような所でした。このような社会環境で、コーヒー生産者の皆さんは、コーヒー栽培を意欲的に持続できるでしょうか。生産する人々の生活が安定してこそ、いいコーヒーを作ろうという元気が湧いてくるわけですから、地域に病院があるということは、大変重要なことなのです。

スターバックスの社会的支援の取り組みは、他にもあります。例えば、男性は働かず、労働は女性がするものと考えられてきた地域では、そのことが地域の生活が改善しない一因でもあるため、女性の社会的地位向上をサポートする活動に取り組みんでいます。また、雨季に生産活動ができなくなる地域では、収入源確保のために、地域の特産品を生かした民芸品製作のサポートを行うなど、地域の生活安定のために様々な取り組みを生産者と共に行っています。

スターバックスが目指す未来

コーヒーの倫理的調達99%を達成したスターバックスですが、「なぜ100%になってから発表しなかったのか?」と質問されることがあります。世界中に2,500万人の生産者がいる中で、スターバックスがこれまで関わりをもったのはおよそ100万人。99%は、さらに新しいサプライヤーや、新たに私たちのサポートを必要としている生産者に関わっていきたいという意志の表れです。そのためにも倫理的なコーヒーの調達について、日本の多くのお客様にも知って頂く必要があります。そこで私たちは、毎月20日を「Ethically Connecting Day(エシカルなコーヒーの日)」として継続的に発信をしています。普段なじみの少ない倫理的調達について、いかに楽しく伝えるかを考え、クイズを活用するなど、店内での話題作りにも取り組んでいます。スタッフが99%にちなんだ、「99」をモチーフにしたメガネをかけるのはその一例です。

現在、そんな私たちの関心事の一つが「気候変動」です。倫理的に調達できる仕組みは整ってきましたが、生産地でも気候変動による影響が見られています。例えば、温暖化によって今まで栽培していた標高の農園ではコーヒーの生育条件が変わってきたり、エルニーニョ現象が起こると中南米では、収穫の遅延により、出荷時期が遅れたり、コーヒーの木を枯らしてしまう「さび病」という病気が発生するなど、これまでより深刻な課題が起こっています。このため、気候変動に耐えられる苗の品種改良を研究して、その苗と研究内容を生産者に無償提供するなどの試みを始めています。

 

2013年にコスタリカに購入した初の自社農園はまさにそのためのものです。スターバックスで販売するコーヒー豆を栽培するためではなく、栽培の実践を通して、生産者への理解を深め、その中で得た経験を生産者とシェアするなど、今後、より良いサポートをするための研究開発の場としての意味合いが大きいものです。

このように様々な取り組みを行っていますが、日本にいる私たちは、遠く離れた生産地でおいしいコーヒーを育てる生産者と直接触れ合う機会はなかなかありません。そのため、生産者のことをよく理解して、それをお客様に伝えていくことが大切だと考えています。お客様にとっても、普段飲む一杯のコーヒーがどのように栽培・調達されているのかを知らずに飲むのと、知って飲むのでは、一杯のコーヒーの味わいが全く違ってくると思いますので、これからも様々な機会にそういったことを伝え続けていきたいと思います。

構成・文:宮崎伸勝/写真:廣瀬真也(spread)