市民のための環境公開講座2017

お知らせ9/12(火)開催 田原 象二氏の講演レポートを掲載しました。

PART2 未来世代へのメッセージ

レポート

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エシカルな選択が未来を変える 〜私たちの役割〜

末吉 里花 氏

エシカルとは、人、社会、地球環境、地域に配慮された消費行動やライフスタイルのことを言います。エシカルという概念が日本に入ってきたのは、震災以降のことで新しい考え方ですが、今、行政や教育機関、企業、消費者にも広く浸透しつつあり、特に若者から注目・支持されています。エシカルとは何か、基本的な説明から、それぞれの立場でどんなエシカルな取り組みができるのか、事例を挙げつつ、最新のエシカルの動向や情報をお伝えいたします。

丁寧に暮らす、丁寧に生きる選択を伝える

末吉 里花 一般社団法人エシカル協会代表理事、フリーアナウンサー


講座ダイジェスト

ミステリーハンターからフェアトレードの世界へ

私は、以前「世界ふしぎ発見!」というテレビ番組で、ミステリーハンターと呼ばれるリポーターの仕事をしていました。“秘境”と呼ばれる地域に行くことが多く、「世界で一番寒い村」と言われるシベリアのペテンキオス村では、永久凍土が融けてきたために家が傾いて暮らせないという近くの村の話を聞いたり、標高6000m級のアフリカ・キリマンジャロでは、山の上にあるはずの氷河が1〜2割しか残っていないという現実に直面。世界は、一部の利益や権力のために、多くの弱者や自然が犠牲になっていることに気づき、活動を始めるようになりました。そして13年前、「ファッションで世界を変える」と唱えるPeople Tree創設者のサフィア・ミニーさんと出逢ったことから、フェアトレードの問題に関わっていくようになったのです。

モノの裏側を知らないことの危険性

現代社会は、誰が、どこで、どのようにして「モノ」を作ったかが分かりにくい構造になっています。しかし、「モノの背景が分からない」という状態は、大変危険であり、問題が多いのです。

モノを作っている裏側には、様々な事情があります。例えば、その製品の製造は気候変動に影響を及ぼしているかもしれません。ある特定の人々の人権を侵して作られているかも知れませんし、貧しい人々を更に貧困に陥れているかもしれません。生物多様性を破壊しているかも知れません。背景を知らなかったら、私たちは、このような問題が起きていることを分からないばかりか、その気がなかったとしても、こうした問題に加担していることになってしまうのです。

例えば、世界では、1日100万t以上の紙が使われていると言われています。つまり、それだけの森林が伐採されており、その森林で暮らす生物の棲み家を奪っていることになります。

また、世界で1億6800万人が従事していると言われる児童労働の問題をご存知でしょうか。本来は学校に行かなければならない子供達が、勉強もできずに劣悪な環境の中で働かされています。将来の夢を尋ねても、未来のことなど考えられず、低賃金の労働に日々追われる子供たちがいるのです。そして実は、そんな彼らは、私たち日本人がよく消費しているモノを作っているケースが多いのです。例えば、チョコレートの原料のカカオ、コットン、コーヒーの栽培、洋服や雑貨の製造などは、その代表です。

ちなみに、今、話題に挙がったコットンは、たくさんの農薬を使わないと育たない農作物です。このため、農薬による健康被害で毎年2〜4万人が亡くなり、300万人が慢性の健康被害に苦しみ、30分に1人が自殺していると言われています。世界の殺虫剤の25%がコットン畑で使われる一方、そのコットン畑は、世界の農産物の耕作面積の2%に過ぎません。そして、コットン栽培で使われる枯葉剤は、ベトナム戦争で使われたのと同じ薬剤を、今も薄めて使っているのです。

さらにコットンは、ご存知の通り、主に衣料品の原料になるわけですが、1990年には、衣料における生産と消費の数量は、ほぼ同じ数値でした。消化率は96.5%ありました。しかし2015年になると、生産量は倍増したにもかかわらず、消費量は横ばいのまま。消化率は40%台にまで低下しました。残りの60%が、どこでどうなっているのかを考えてみて下さい。

これらの現実について、あなたはどう感じますか。私たちは毎日洋服を身につけていますが、その選択一つ取っても、実は世界にとって大変重要なことなのです。

日本人は意外と得意! 〜エシカルな生活とは

「エシカル(ethical)」は、一般には「倫理的な」と訳される言葉です。しかし、私たちが考えるエシカルとは、人、社会、地球、環境、地域に思いやりのあるお金の使い方や生き方のことです。そして、毎日の消費行為の中から、世界を変えることができるという考え方が「エシカル消費」です。その筆頭が「フェアトレード」ではないでしょうか。フェアトレードとは、先進国と途上国が対等な関係の中で、ビジネスを通じて途上国を支援するというもので、チャリティーによる支援とは違うものです。その動きは、世界30ヶ国・約1900の自治体がフェアトレードタウン認証を受けるなど国際的な広がりを見せており、日本国内でも、政府の施策や中高生の教育にも反映されるようになりました。また、全国の大学で70以上のフェアトレードサークルが活動を行っています。

私たちがエシカル消費を実現するのに分かりやすいのは、製品に認証マークがついているかを確認することです。

もし、そういう製品が見つからない場合は、その店に「フェアトレード製品は?」と質問やリクエストをしてみて下さい。ある大手スーパーも、一人の主婦の声からフェアトレード製品を扱うようになりました。声を上げるのが恥ずかしいようでしたら、投書やメールでも構いません。

私自身も、100%エシカル消費をしているかというと、決してそうではありません。この社会で、それはとても難しいことです。でも、選択肢がある時には必ずそちらを取るようにしています。それが、モノを作ってくれる人々への思いやりに繋がるのだと考えています。

私たち日本人には、「おたがいさま」「おかげさま」「足るを知る」「もったいない」などの発想があり、元々「エシカル」に親和性の高い国民です。また、近江商人の「三方よし」という言葉もありますが、私はそれに2つ足して、「作り手よし、売り手よし、買い手よし、世間よし、未来よし」の「五方よし」を提唱させて頂いています。このように、日々の暮らしの中で、しっかりと自分の行為が周囲に及ぶ影響を考え、消費者としての責任を果たす人が増えて頂ければと思います。

構成・文:宮崎伸勝/写真:廣瀬真也(spread)